人工生命

人工生命という言葉に対して参考にしていただきたい重要な文献は多々ありますが、 例えば「人工生命とは、自然の生命システムに特徴的な振る舞いを示す人工システムに関する研究である」(ref1)と書かれています。

既存の生物学で知られている知見或は現存する生物を通して生命の探求を行うBiological Life(B-Life)に対して、Artificial Life (A-Life)では「生命とは何か」、「生命の原理とは何か」、「生命に関する一般原理とはなにか」という探求を行う際、「一般原理を導くための生命を"作り出す"」という方法論を用いてそれに接近する試みといえるのではないでしょうか。

つまり、我々が今あるのはどういう生命原理で成り立っているのか、という疑問を、「ある原理で動くものが生物的なものと同値だと見える場合、それは「可能な生命」であろうかという作業を通してその答えに迫ろうとする試みの総称です。

生物から学ぶ事象は多く、「生物から真似る」という事を通して人々は多くの成果物を作り出してきましたが、実際に「生物そのものを作り出す」という所までその成果はいたっていません。しかし、人工生命は「生命、またはそれらしいものを作る」ということが主眼的な目標ではなく、そういう過程を経て生命への理解を顧みる事が、「生命」を語るうえで必要であるという主張を行いながら、分野を隔てずその探求を行う活動であると思います。

多くの研究例では、生命の原理を論理的枠組みで記述することを、論理記述が可能なコンピュータモデルを用いたシミュレーションを通して行っていますが、コンピュータモデルに限らずその背景は現存の生物学や情報科学はもとより、生命現象を局所的相互作用による全体的なシステムとして捉える場合などに必要な数学や物理などの技法や哲学的な思索という先端科学の知見、ロボットなど実際に動くものを作り出すための工学的な手法、その他社会システムに現れる現象を捉えようとする試みなど、その手法には際限はありません。しかし全てのデータを手中に納める事ができ、何度も実験の再現ができる「コンピュータによる思考実験」というのが強力な手法である事は、現代科学における「モデル」を用いる他の分野と同様に重要です。

この研究室では、原田が単純な組み合わせルール表を用いた非自己複製機能から現れる集団的自己複製の動態を研究しました。現在では学類四年の山本がTierraやAvidaなどの人工生命ソフトウェアをもちいて卒業研究を行っています。

ref1: 「人工生命の方法-そのパラダイムと研究最前線-」,上田,下原,伊庭,編, 工業調査会, 1995
(これが人工生命に関する唯一の本ではないので、出版されている複数冊を読み比べる事をおすすめします。そうしないと本質的なものが見えてこないかもしれません。)

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