マルハナバチ

マルハナバチは、温帯の被子植物の重要なポリネーター(花粉媒介動物)として知られる真社会性昆虫の仲間です。日本列島には亜種も含めてぜんぶで21種の在 来マルハナバチが生息しています。地中、木の穴、人工物のすきまなどの目立たない場所に巣をつくるため、ごく身近な野生生物でありながら、その個体群サイズや生活史の詳細など、今なお不明な部分が多く残されています。このことをふまえ、当研究室ではまず、マル ハナバチ類の自然巣の発見技術の確立に力をそそいでいます。また、人工巣箱を野外に設置し、マルハナバチに自然営巣させる試みもおこなっています。 このようにして場所を把握したマルハナバチの巣について、1年をつうじた生活史のパターン(ワーカー、雄バチ、新女王バチがいつどれだけ生まれて死ぬか)、採餌のパターン(花蜜と花粉をいつどこからどれだけ集めるか)、餌資源の変動 パターン(花の種類と数がどう移り変わるか)などを詳細に調べあげることが 我々の目標の1つです。また、餌資源の分布や量にもとづき巣の場所を推定するための数理モデルや、 ワーカーから集められたDNAサンプルの情報から未発見の巣数を推定するコンピュータ・アルゴリズ ムも開発中です。こうした理論によるアプローチがすすめば、野外調査だけで は簡単に知ることのできない、マルハナバチ集団レベルの個体群動態の把握も、 将来夢ではなくなるかもしれません。

さらに、マルハナバチは、わ き目もふらずせっせと花から花へ飛びまわって花蜜と花粉を集めることから、 採餌行動や、生物間相互作用の研究対象としても興味深い生き物です。当研究室では、コロニーや集団レベルの研究 だけでなく、個体の採餌行動に影響をおよぼすさまざまな要因についても、実験室および野外で研究をすすめています。また、植物の交配がどれくらいの空間スケールでどんなパターンにしたがって起こるか、そしてそれが植物の進化にどのような影響をおよぼすかを知るため、マルハナバチの採餌における空間移動、およびその結果起こる植物の繁殖に焦点をあてた研究もおこなっていま す。 マルハナバチは、一般の「ハチ」のこわいイメージとは異なり、見た目やしぐ さが非常に愛らしい、大変魅力にあふれた生き物です。マルハナバチ、あるいは我々の研究内容に興味を持った方は、 さらに詳しい説明を読んでいただければ幸いです。
→ 採餌ポリネーター

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